2019年05月19日

50 「長平箭頭歌」 李長吉詩試解

 <長平の古戦場で矢じりを拾って思いし事>

漆灰骨末丹水沙
漆灰しつかい 骨末こつまつ 丹水たんすいしや
(古い鏃を拾い)
こびりつく黒いのは漆の灰か、白いのは骨のくず、そして丹沙たんしゃのように赤いのは 

淒淒古血生銅花
淒淒せいせいタル古血こけつ銅花どうかしよう
怖気だつ古い血の痕、銅の上、花の模様に錆つくる 
 *「淒淒」ぞっとするの意にとる

白翎金簳雨中尽
白翎金簳はくれいきんかん ちゆう
白いはねかねのよう固かった竹矢柄、みな雨に朽ちはてて 
 *「簳」矢柄、矢の細い柄

直余三脊残狼牙
三脊さんせきあま狼牙ろうがのこ
ただ余す三角の鏃、狼は牙だけを残したか 
 *「三脊」三つの背で三角形

我尋平原乗両馬
われ平原へいげんたずネテりよう
二頭の馬を乗り継いで、長平の平原を尋ねて来たが 

駅東石田蒿塢下
駅東えきとう石田せきでん 蒿塢こうろもと
駅の東の石がころがる田のあたり、よもぎの生える堤の下は 
 *「蒿」はよもぎ、「塢」は堤

風長日短星蕭蕭
かぜながみじかクシテほし蕭蕭しょうしょうタリ
風吹き抜ける音長く、日短かく、空の星すら蕭蕭とさびしくひかる 

黒旗雲湿懸空夜
くろ旗雲きうん湿うるおイテむなシキよるかか
黒い旗雲湿じっとりと夜空に懸り、人気ひとけもない夜 

左魂右魄啼肌瘦
左魂さこん 右魄ゆうはく 肌瘦きそう
右も左も魂魄こんぱくがすすり泣く、肌身からだは痩せてく、野に骨をさらすと 
 *「肌」は肉体、身体

酪瓶倒尽将羊炙
酪瓶らくへい倒尽とうじんシテ羊炙ようしゃすす
びんさかさに酪酒を注ぎ尽くした、羊の炙りそなえよう 
 *「酪酒」牛羊の乳でつくった酒

虫棲雁病蘆筍紅
虫棲むしす雁病がんやンデ筍紅じゅんくれないナリ
虫が棲み、雁は病みつき、あしの芽は野にあかく 
 *「蘆筍」蘆の芽

廻風送客吹陰火
廻風かいふうかくおくッテ陰火いんか
つむじ風、見送りと旅人に鬼火吹きつけ 
 *「客」旅人、「陰火」鬼火

訪古汍瀾收断鏃
いにしエヲ汍瀾がんらんトシテ断鏃だんぞくおさ
古戦場訪ねきて、涙ながしつやじり断片かけら拾い収むる 
 *「汍瀾」涙の流れる様子

折鋒赤璺曾刲肉
折鋒せつほう赤璺せきぶんかつにく
折れた切っ先、赤いひび、かっては人の肉を切りさく 
 *「鋒」切っ先

南陌東城馬上児
南陌東城なんぱくとうじょう じよう
街に帰れば南のみちに、街の東に、馬上ゆたかに男児おのこゆきかい 
 *「陌」は路地

勧我将金換簝竹
われすすム きんもつ簝竹りょうちくエヨト
我に勧めん、
「そのかなものを売って祭具と換えなさい、お祭りをしてやりなさい」と 
 *「簝竹」祭祀の籠ととる


posted by かちかち山 at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 李長吉詩 試解